妊産婦の難病に配慮
妊娠中の女性には処方しないとされている医薬品が順次、使えるようになる見通しだということです。
妊娠中の一部の禁忌薬について、厚生労働省が初めて処方を公式に認める方針を固めたのです。
薬事・食品衛生審議会での検討を経て、薬の添付文書を改訂するよう製薬会社に通知するとのことです。
第1弾として、免疫抑制剤3品目の添付文書が改訂される見込みとの事で、その後も対象は拡大する予定だそうです。
安全性の観点から
妊婦は安全性の観点から薬の開発段階で臨床試験(地検)が困難なため、発売当初は動物実験の結果を根拠に禁忌を決めているとのことで、各社で差がないそうです。
多くの薬が製薬会社の判断で『禁忌』とされ、医師は妊娠を希望する患者に、薬の使用を中止するか、妊娠を避けるよう指導するのが一般的でした。
改訂が見込まれる3薬剤は『タクロリムス』、『シクロスポリン』、『アザチオプリン』です。
臓器移植後の拒絶反応抑止のために処方される他、膠原(こうげん)病の治療薬としても使われていものです。
処方されている15~44才の女性は推計約3万人に上るとのことで、改定されれば禁忌の項から妊婦が除外されることになります。
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日本産婦人科学会と添付文書で現場に混乱が
3薬剤は妊娠中に使用しても流産や奇形の自然発生率を超えないという研究も有るとの事で、日本産婦人科学会が作成したガイドラインには、『妊娠中でも必要があれば使用することが認められる』とされているそうです。
しかし、添付文書では禁忌とされているため、現場の混乱を招いたのです。
服薬理由に妊娠を諦めたり中絶したりした患者や、妊娠のため薬を止めて症状が悪化した事例も、跡を絶ちませんでした。
厚労省は2005年10月に、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)に『妊娠と薬情報センター』を設け、調査研究や相談を続け、3薬剤の安全性を確認してきました。
村島温子センター長は『改訂で、難病患者の妊娠・出産の希望に配慮した治療の可能性を広げたい』と話しています。
妊娠出産における選択は人権問題
免疫抑制剤以外にも順次、禁忌薬から外す対象に加える方針とのことで、厚労省は『胎児への影響について、正しい情報を伝えていきたい』とのコメント出しています。
日本移植学会元理事で免疫抑制剤に詳しい剣持敬・藤田保健衛生大教授(移植・再生医学)は、『妊娠出産における選択は人権に関わる問題とし、今回の3薬は、妊娠・出産に臨む臓器移植後の女性にも使われ、現場の運用と矛盾する添付文書は以前から問題されてきた。
改訂は難病女性の妊娠・出産の希望に配慮した薬の処方を促す大きな一歩になるだろう』と話ししています。
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